路側帯で無灯火の自転車が歩行者に正面から衝突した事故

名古屋地裁平成30年2月28日判決(ウエストロー)

事案

路側帯内無灯火の自転車歩行者に正面から衝突したという、自転車対歩行者の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、自転車事故の過失割合でお悩みの方は参考にしてください。

  • 路側帯内の事故
  • 自転車と歩行者の正面衝突
  • 自転車の無灯火
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者0%対自転車100%

歩行者 0% 対 自転車100%

裁判所の判断

裁判所は以下のとおり判断して過失相殺を認めませんでした。

「被告は、被告の右肩と原告の右肩とが接触したことなどから、原告が車道を斜め横断していた旨を主張するが、被告が原告に気付いたのは衝突直前であり、衝突前の原告の動きを認識しておらず、その他、原告が車道を斜め横断していたと認めるに足りる証拠はないから、被告の上記主張は、採用できない。」

「本件事故は、路側帯における歩行者と対向自転車との衝突と認められるところ、その事故態様に加え、現場の状況や被告車両に照明装置が装着されていなかったことからすると、被告は、被告車両を運転するに際し、前方の見通しが極めて困難であったことから、照明装置を装着して点灯し、かつ、その照射範囲内で安全に停止できる速度で進行すべき注意義務があったにもかかわらず、これを怠り、照明装置を装着せずに時速約20kmで漫然と進行した過失により、被告車両を原告に衝突させ、本件事故を発生させたと認められる。

よって、被告は、原告に対し、民法709条に基づき、本件事故と相当因果関係のある原告の損害について賠償する責任を負うというべきである。

そして、上記事故態様や被告の過失の内容等からすると、本件事故は、被告の一方的過失により生じたものというべきであるから、被告の過失相殺の主張は、採用できない。」

電話での簡単なご質問にも対応!お気軽にご相談ください
お電話で無料相談
LINEで無料相談

解説

概要

自転車側は、歩行者が車道を斜めに横断したと主張しましたが、裁判所は斜め横断を認めず過失割合で考慮していません。

自転車が、見通しの悪い道路で無灯火であることや、時速20㎞で走行していたことを考慮し、過失相殺は認められないと判断したものです。

歩行者の斜め横断については、歩行者にとって道路の安全確認が困難になることや、車道に長い時間とどまることになる横断方法であるため、歩行者の過失として考慮しうるものですが、そもそも斜め横断の事実を認めませんでした。

基本過失割合

自転車と歩行者の路側帯での事故

自転車と歩行者の事故の過失割合については、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」で基本過失割合と修正要素が示されています。

路側帯の歩行者と直進自転車の事故の基本過失割合は、歩行者0%対自転車100%とされています。

自転車の路側帯の走行について

自転車も路側帯の通行が認められていますが、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行することが求められます。

自転車の路側帯の通行について警視庁の説明を引用します。

自転車は、歩行者の通行に大きな妨げとなる場合や白の二本線の標示(歩行者専用路側帯)のある場合を除き、路側帯を通ることができます。
ただし、左側部分に設けられた路側帯を通行して下さい。
その場合は、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければなりません。

引用元:警視庁、自転車安全利用五則

自転車の路側帯の通行については⇒自転車が道路を通行するときのルールは?

自転車の無灯火について

自転車も夜間には灯火義務がありますので、無灯火で自転車事故を起こすと過失として評価される可能性が高いといえます。

本件でも、そもそもライトのない自転車を運転していたことが過失として評価されています。

自転車の無灯火については⇒自転車が夜間にライトをつけることは法律上の義務か?

自転車の速度

自転車の一般的な速度は時速15㎞程度とされており、時速20㎞を越える速度は高速度走行という評価を受けます。

本件では路側帯であることも踏まえ、高速度であるという評価を受けています。

自転車事故で問題となる速度は?

  • 原告が車道の斜め横断をしたという主張は、証拠がないとして認めなかった
  • 被告が自転車で無灯火、高速度(時速20㎞)で走行した過失を重視して、過失相殺を認めなかった。

類似の裁判例

裁判例①

路側帯内で歩行者に自転車が正面から衝突した事故の裁判例です。

同じ路側帯内の自転車と歩行者の事故なので参考になります。

路側帯で自転車が歩行者に衝突した事故

裁判例②

路側帯内で自転車同士が正面衝突した事故の裁判例です。

自転車同士の事故ですが、路側帯内の事故ということで参考になります。

路側帯で自転車同士が正面衝突した事故

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、傷害慰謝料250万円、後遺障害慰謝料830万円を含む3278万0402円の請求を認めました。

関連するページ

  1. 自転車事故の慰謝料の解説
  2. 自転車事故の示談までの流れ
  3. 自転車事故の損害賠償請求の疑問を解決