直進する自転車同士が歩道中央で正面衝突した事故
令和元年5月27日東京地裁判決(自保ジャーナル2050号)
事案
自転車同士が歩道上を直進して正面衝突したという、自転車対自転車の交通事故です。
以下の事情が考慮されていますので、類似する事故でお悩みの方は参考にしてください。
- 自転車同士の正面衝突事故
- 自転車の歩道上の事故
- 自転車が歩道の中央を走行した
過失割合
自転車50% 対 自転車50%
裁判所の判断
裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。
解説
概要
自転車も「歩道通行可」の歩道であれば通行することができます。
本件では、どちらの自転車にも前方不注視と、歩道中央を走行した過失があるとして、その過失に差はないと判断したものです。
正面衝突事故でこちらの過失が軽いと主張していくためには、50%対50%を修正する事情があることを立証することが必要となります。
加害者が急に進路を変えて衝突してきたり、高速度で走行していたり、スマホを見ながら進行してきた、無灯火で走行していた、二人乗りで走行していたなどの事情が考えられます。
基本過失割合
自転車事故の過失割合は「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」(赤本下巻 日弁連交通事故相談センター )というものを参考にし、過失割合について検討していくことが考えられます。
直進する自転車同士が歩道上で正面衝突した事故については、基本過失割合は自転車50%対自転車50%とされています。
これは、直進自転車同士なので、基本的には過失は同程度であるという考え方によるものです。
参考ページ⇒自転車同士の事故の過失割合の解説
自転車の歩道の通行
自転車も歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。
自転車が歩道を通行できるときでも、道路交通法63条の4第2項で決められた、歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。
自転車は「歩道の中央より車道寄り」を走行しないといけないので、歩道の中央を走行することはこれに違反することになります。
本件で「歩道の中央付近を走行した過失」というのは、このことを指しているのです。
関連するページ⇒自転車は歩道を通行できるの?
類似の裁判例
裁判例①
自転車同士の歩道上の正面衝突事故です。
裁判例②
自転車同士の歩道上の事故で、一方がやや進路を変更したものです。
裁判例③
自転車同士が歩道上ですれ違おうとしたときの事故です。
⇒歩道上で直進自転車と無灯火自転車がすれ違うときに接触した事故
裁判所が認めた慰謝料と損害額
裁判所は、傷害慰謝料132万0000円を含む174万4251円を損害として認め、過失相殺後の金額を87万2125円としました。