先行自転車が進路変更し追抜き自転車と接触した事故

令和元年11月20日大阪地裁判決(交通事故民事裁判例集52巻6号)

事案

先行する自転車が進路変更し、後ろから追い抜こうとした自転車と接触したという、自転車と自転車の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、類似する事故で参考にしてください。

  • 自転車の進路変更
  • 自転車の追抜き
  • 自転車の後方確認義務
自転車同士(車道上)の裁判例
自転車と自動車・単車の裁判例

過失割合

自転車50%対自転車50%

自転車50% 対 自転車50%

裁判所の判断

本件事故は、前方を走行していた自転車が原告で、後ろから走行してきた自転車が被告です。

裁判所は、原告は後方から走行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させるおそれがあるときは、進路変更をしてはならない注意義務(道路交通法26条の2第2項)に反した過失があるとしました。

ただ、過失の重さにつきましては、先行車は後方確認が困難(自転車にはバックミラーが義務づけられていない)のに対して、後続車は先行車の動きを確認して衝突回避措置が容易であることや、進路変更の合図は容易ではなくほとんど履行されていないという実態があることから、先行自転車の過失は「比較的大きい」というものに止まるとしました。

原告が67歳と高齢であることも踏まえ、過失割合を50%対50%としたものです。

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解説

進路変更自転車と後続自転車の事故ですが、自転車にとって後方確認が容易でないことや、進路変更の合図がほとんど履行されていないことを踏まえ、先行自転車の過失をさほど大きく評価しませんでした。

高齢者修正も行って50%対50%にしたものですが、進路変更自転車が被害者の事故で参考になります。

なお、前方車が進路変更を行ったのではなく、直進中にわずかにぶれた程度であれば、全く異なる評価をすることになります。

類似の裁判例

裁判例①

後方の自転車が狭い道路でベルを鳴らすことなく追抜きをし、前方自転車は左後方の安全確認をせずに左折したという事故です。

歩道上で先行自転車の前輪と追い抜き自転車の後輪が接触した事故

裁判例②

後方の自転車が追抜きを行おうとし、前方の自転車が後方の安全を十分に確認することなく右へ進路変更したという事故です。

追い抜き自転車と右方へ進路変更した自転車が衝突した事故

裁判例③

歩道上を進行する自転車が進路変更し、後方を走行していた自転車と接触したという事故です。

歩道上で同一方向へ進行する自転車同士が接触した事故

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、入通院慰謝料142万円、後遺障害慰謝料830万円を含む損害を認め、過失相殺等を行った後の金額を577万9331円としました。