雨の日に傘を差しながら自転車に乗る人がいますが、自転車事故につながりかねない危険な走行です。
自転車の傘差し運転は法律で禁止されており、5万円以下の罰金という罰則もあります。
また、傘差し運転で交通事故を起こして損害賠償の責任を負ったときに、傘を差していたことを理由に過失が重いとされる可能性があります。
傘を差しながら自転車に乗ることが法律に違反していることや、傘を差しながら自転車に乗って事故を起こした場合の損害賠償の責任について解説します。
このページで解決するお悩み
- 傘を差して自転車に乗ることが違法であることがわかる
- 傘差し運転の罰則がわかる
- 傘差し運転で事故になったときの責任がわかる
その他のQ&A
自転車の傘差し運転の禁止
自転車の傘差し運転を見かけることがありますが、傘を差しながら自転車を運転しても法律上問題がないのでしょうか?
自転車に乗る人が守らないといけないこととして、道路交通法71条6号は「公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るために必要と認めて定めた事項」と定めています。
そして、大阪府道路交通規則13条第2号は、自転車に乗る人が守らないといけないこととして、「傘を差し、物を担ぎ、又は物を持つ等視野を妨げ、若しくは安定を失うおそれがある方法で自転車を運転しないこと」と定めています。
このように、道路交通法71条6号、大阪府道路交通規則13条第2号により、自転車の傘差し運転は禁止されているのです。
⇒参考ページ(大阪府道路交通規則)
なお、大阪以外にも同様の規定がありますので、大阪以外であれば許されるということではありません。
自転車の傘差し運転の罰則
自転車の傘差し運転は禁止されていますが、罰則もあるのでしょうか?
自転車の傘差し運転をすることは、道路交通法120条1項9号により「5万円以下の罰金」とされています。
最近は警察による自転車運転の取り締まりも増えていますので、傘差し運転は絶対に行わないようにしましょう。
固定具で傘を差しながらの運転
自転車の傘差し運転(片手運転)が禁止されているとしても、自転車に固定具で傘を固定し、両手でハンドルを握って運転することは許されるのでしょうか?
この場合、自転車の片手運転ではないため、道路交通法71条6号、大阪府道路交通規則13条第2号に違反することにはなりません。
しかし、道路交通法55条2項には、「運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ・・・積載をして運転してはならない」とありますので、この条項に違反するといわれてしまう可能性はあります。
また、大阪府道路交通規則11条4号には、積載物の長さ、幅又は高さの制限として、「長さ 積載装置の長さに0.3メートルを加えたもの」「幅 積載装置の幅に0.3メートルを加えたもの」「高さ 2メートルから積載をする場所の高さを減じたもの」という定めがありますので、傘を差したことにより幅の制限に違反してしまう可能性があります。
大阪府警察の説明を引用します。
傘スタンドを使用しての傘さし運転について
傘スタンドを使用しての傘さし運転について傘スタンドを使用しての運転は片手運転にはなりませんが、次のような違反になる可能性があります。道路交通法 第55条第2項
(乗車又は積載の方法)
運転者の視野を妨げ、あるいは車両の安定を害するような積載等をして車両を運転してはならない。
道路交通法 第70条
(安全運転の義務)
通行人に傘が接触し、他人に危害を及ぼした場合(交通事故)等は、危険行為の対象となる可能性があります。
大阪府道路交通規則 第11条第4号
(軽車両の乗車又は積載の制限)
「傘スタンド」に傘を積載した場合に、傘の幅及び高さの制限は、
幅:0.3メートル
高さ:2メートル
で、超えた場合は違反になります。
やはり、固定具を使用した傘差し運転も控えた方がいいでしょう。
傘差し運転を行った場合の過失
傘差し運転で自転車事故が発生した場合、自転車に乗っていた人の過失についてはどのように評価されるのでしょうか?
自転車事故の損害賠償では、過失割合によって損害賠償額が大きく変わりますので、加害者の傘差し運転が過失としてどのように評価されるかは極めて重要な問題です。
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傘差し運転の過失
傘を差しながら片手で自転車を運転をしていた場合には、傘を差していたことが過失として評価される可能性は高いといえます。
やはり、もし両手でハンドルを握っていれば適切な回避行動をとれたと判断されるでしょうし、傘差しによる片手運転が過失として評価されないことは考えにくいといえます。
一方、固定具で傘差しをしていた場合については、事故状況、自身の運転に与えた影響、相手方へ与えた影響等を踏まえた判断が行われると考えられます。
運転者は両手でハンドルを握っているため、傘の存在が事故発生の危険を高めていないと考えられる事故もあるでしょうし、一方で傘が影響して衝突を招いたり、回避が困難となったといえる事故もあると考えられるためです。
参考となる裁判例
参考となる裁判例を紹介します。
⇒一方の自転車に傘差し運転、徐行義務違反、もう一方の自転車に傘差し運転、左方優先義務違反が認められる事故です。
⇒一方の自転車に傘差し運転、徐行義務違反が認められる事故です。
傘を差していたことの証明方法
加害者が傘を差していたことを否定したときに、これを証明するにはどのような方法があるのでしょうか?
まずは、事故のときに雨天であったことを証明することが必要となりますが、気象庁のホームページで確認したり、裁判であれば天気の証明書を発行してもらうことも検討します。
参考:気象庁
事故現場では、相手が傘を持っている姿を写真で撮影しておくことが考えられます。
また、刑事記録を入手し、警察の記録から傘を差していたことが読み取れないか確認します。
実況見分調書には、事故直後に事故現場で立ち会う様子が撮影されていることもありますので、その写真に傘をさしておりレインコートを着用していない様子が写っていれば、傘さし運転を証明する証拠の一つとなります。
まとめ
傘を差しながら自転車に乗ることは、事故につながる危険があるというだけでなく、法律に違反して罰則もある行為です。
自転車事故で人を怪我させて罪に問われるときも、過失が重いとされてしまいます。
損害賠償請求でも傘を差していたことが過失とされる可能性が高いので、傘を差して自転車に乗ることは絶対にしないようにしましょう。