自転車事故の過失割合の交渉で、不利にならないためにはどうしたらいいのでしょうか?
警察で人身事故にしてもらい刑事記録を入手できるようにしておくこと、基本過失割合を修正できる事情がないか検討すること、少しでも有利な裁判例がないかきちんと調べることといったことが重要となります。
被害者の過失が大きいとされてしまうと、それだけ賠償金が減ってしまい損をしてしまう可能性があります。
本当に被害者の過失が大きい事故であれば仕方のないことではありますが、事故状況について事実と異なる認定をされてしまったり、過失割合についてあまりに不当な評価をされてしまうのは避けなければなりません。
以下では、自転車事故の過失割合について、不当に不利な結果とならないための注意点を解説していきます。
自転車事故の過失割合の考え方
自転車事故の過失割合が争いになったときは、まずは事故状況がどのようなものであったかを確認し、その事故状況を前提にどのような過失割合であると評価するかを考えていきます。
そのため、自転車事故の過失割合で不利にならないためには、①事故状況について相手に有利な認定をされないこと、②過失割合について不利な評価をされないことが重要となります。
①の事故状況について相手に有利な認定をされないというのは、事実と違う相手に有利な事故状況になってしまったり、こちらに有利な事情(相手方の無灯火やスマホ運転)が認めれないという状況を避けるということです。
自転車事故の過失割合については、自転車同士の事故の過失割合、自転車と歩行者の事故の過失割合で詳しく解説しています。
怪我をしたら「人身事故」にする
自転車事故で怪我をすると、警察から人身事故にするか物損事故にするか聞かれます。
ここで、きちんと人身事故にすることが重要です。
人身事故にすることで、警察は実況見分調書等の刑事記録を作成し、被害者はそれを入手できるようになります。
刑事記録には、事故現場の状況だけでなく、加害者が警察に説明した事故状況が記録されていますので、「事故の直後と言っていることが違う」といったトラブルを防ぎやすくなります。
また、加害者の説明する詳細な事故状況を把握することで、加害者の過失が重いということを主張しやすくもなります。
これを物損事故にしてしまうと、物件事故報告書という簡単な図しか入手できなくなり、事故状況、過失割合についての主張が難しくなってしまいます。
自転車事故の過失割合で不利にならないための第一歩として、怪我をしたのであれば人身事故にするということが重要といえるのです。
自転車の交通事故の人身と物損の違いについては、自転車事故は警察で人身と物損のどちらにすべきなの?で詳しく解説しています。
実況見分、事情聴取で記憶のとおり話す
自転車事故が人身事故になると、実況見分、事情聴取が行われ、警察に事故の状況について説明する機会があります。
ここで重要なのは、自身が体験した事故状況を、記憶のとおり説明するということです。
あたりまえのことのように思えますが、実況見分、事情聴取のときには、警察官がこちらの話を誤解してしまったり、相手の説明に合わせるよう誘導するようなやりとりが行われることも少なくありません。
実況見分調書は、過失割合についての交渉だけでなく、裁判になっても重要な証拠として扱われるものです。
裁判で、実況見分調書と違う事故状況を主張しても、「なぜ記憶と違う説明をしたのか?」「なぜ説明とことなる図面が作成されたのか?」と追及され苦しい戦いになってしまいます。
警察に対しては、とにかく自分の記憶のとおりの事故状況を説明するようにしましょう。
実況見分、事情聴取の注意点については、「自転車事故の実況見分と事情聴取で気をつけることは?」で詳しく解説しています。
「修正要素」に気をつける
自転車事故の過失割合については、自転車と歩行者の事故であれば「別冊判例タイムズ38」、自転車同士の事故であれば「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」(赤本 下巻)を参考に過失割合を決めるため、保険会社から該当部分のコピーが届き「この事故状況ですと、過失割合は○%対○%になります」といった説明を受けることがあります。
ここで、保険会社は「基本過失割合」での過失割合を主張し、被害者に有利な修正要素を考慮していないことがあるので注意が必要です。
例えば、被害者が高齢者であれば10%の修正を行うところ、これを考慮しない過失割合を提示する例は少なくないように思います。
自転車事故の過失割合が争いになったときは、適用できる修正要素がないか慎重に検討することが重要といえます。
有利な裁判例をみつける
自転車事故の事故状況については、定型的なものばかりではないため、過失割合について明確な判断を示しにくいことがあります。
そうした場合には過去の裁判例を参考に過失割合を決めるのですが、有利な裁判例を見つけることができるかが大きなカギを握ることになります。
自転車事故の裁判でも、よく似た事故の裁判例を多数提出し、同様の判断をするよう主張することは少なくありません。
そうした裁判例をみつけることも、自転車事故を扱う弁護士に求められる能力なのです。
自転車事故の裁判例については、自転車事故の過失割合の裁判例で詳しく解説しています。
事故現場の写真を撮影しておく
自転車事故の事故現場の写真を撮影しておきましょう。
事故現場の状況については、刑事記録で確認することができますし、Googleマップなどで気軽に見ることもできます。
しかし、事故のときには工事をしていて視界を遮られていたのに、数か月後に現場に行くと何もなくなっているということもあります。
また、示談交渉は治療を終えてから行うため、事故の発生から示談交渉までには数か月から1年以上もかかることがありますので、道路の整備などが行われて、事故現場が全くの別のものになってしまうこともあります。
Googleマップで過去にさかのぼって確認することはできますが、ちょうどタイミングのよい時期のストリートビューがあるとは限りませんので、事故から時間をおかずに写真撮影をしておくことは重要といえます。
保険会社に提示されるままに示談してしまわない
保険会社から賠償案とともに過失割合が示されても、それはあくまで「保険会社の見解」に過ぎないものです。
保険会社は事故の専門家なのだから間違いないと思い込むのは危険です。
保険会社から過失割合を示されたら、示談をする前に弁護士に相談することをお勧めします。
保険会社の提示する過失割合に納得できないときは、正当な判断をしてもらうため裁判を起こすこともできますので、どうしても保険会社との話し合いがまとまらないときも、あきらめて示談をする必要はないのです。
まとめ
自転車事故の過失割合で不利にならないために、事故状況について争いになったときに備えて人身事故にし、警察での捜査に対しては記憶のとおり説明することが重要です。
過失割合の決めるときにも、過失割合の修正要素や、有利な裁判例について十分な調査検討を行うようにしましょう。