自転車保険の条例による加入義務化が進んでいますが、具体的にどのような義務が生じるのでしょうか?
自転車を利用している人は、自転車保険や個人賠償保険といった、人を怪我させてしまったときに支払われる保険に加入する必要があります。
自転車の交通事故で損害賠償請求を行うにあたり、加害者が自転車保険に加入しているかどうかは重要な意味を持ちます。
また、自転車保険にはどのようなものがあるかを紹介し、自転車保険を選ぶときの注意点について解説していきます。
このページで解決するお悩み
- 自転車保険の加入義務化についてわかる
- 自転車保険にどのようなものがあるかわかる
自転車保険の加入義務化
大阪府では平成28年7月から自転車保険への加入が義務化されています。
「大阪府自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」の12条1項は以下のとおり規定してます。
第12条自転車利用者は、自転車損害賠償保険等(自転車の利用に係る交通事故により生じた他人の生命又は身体の被害に係る損害を填補することができる保険又は共済をいう。以下同じ。)に加入しなければならない。ただし、当該自転車利用者以外の者により、当該自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等に加入しているときは、この限りでない。
同条例では、保護者が未成年者に自転車を利用させる場合の義務(12条2項)、事業者が事業活動において従業員に自転車を利用させる場合の努力義務(12条3項)も定めています。
また、自転車の小売店には、自転車を販売する際に購入者に自転車保険加入の有無を確認する努力義務も課せられています(13条1項)。
ここでいう自転車保険とは、自転車で相手を怪我させてしまったときに保険金が支払われる保険を指しており、自分が怪我をしたときに保険金が支払われる保険ではありません。
大阪府警察の説明を引用します。
この条例で規定している自転車保険とは?
個人賠償責任保険のように、自転車事故によって生じた他人の生命又は身体の損害を補償することができる保険又は共済をいいます。このため、自分自身の生命又は身体を補償する傷害保険は該当しません。
大阪府だけではなく、多くの都道府県で自転車保険の義務化が進んでいます。
自転車事故の高額賠償例もありますので、自転車に乗るときは保険の加入が必須といえます。
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自転車事故の保険の種類
自転車事故を起こしたときの保険は、「自転車保険」という名前のついた保険商品だけではありません。
被害者へ賠償金を支払うということでは共通していますが、示談代行サービスの有無や、支払い金額の上限があるなどの違いがあります。
自転車事故に対応する保険を紹介していきます。
自転車向けの保険
自転車のための保険として発売されている保険商品です。
自転車で相手を怪我させた場合だけでなく、自分が怪我をしたときにも保険金が支払われるタイプもあります。
ただ、自身の保障を厚くすると保険料が割高になってしまうので、基本的には相手方の怪我への対応を重視して選択することをお勧めします。
自動車保険の特約
自動車に乗っている方は自動車保険に入られているはずですが、自動車保険の特約として自転車保険に対応するものもあります。
自動車保険の保険証券で確認することができますし、保険会社に確認すれば特約の有無を教えてもらえます。
火災保険の特約
自宅の火災保険の特約として、個人賠償保険がついており自転車事故に対応できることがあります。
個人賠償保険というのは、他人を怪我させてしまったり、他人の物を壊してしまったときに、被害者にお金を支払ってもらえる保険のことです。
自転車事故も、他人を怪我させてしまったり、他人の物を壊してしまったときに当たるため、自転車保険と同じ役割を果たしてくれるのです。
なお、個人賠償保険を自動車事故で使うことはできないので、自動車を運転するときは自動車の任意保険に加入する必要があります。
傷害保険の特約
傷害保険とは自分が怪我をしたときの保険ですが、この特約として個人賠償保険がついており自転車事故に対応できることがあります。
見落としがちですが保険証券を確認してみましょう。
各種共済の特約
各種共済についても、自分の通院、入院に対応するだけでなく、特約として個人賠償保険がついており自転車事故に対応できることがあります。
PTA等の保険
PTAや学校が窓口となる保険があり、学生はこうした保険の個人賠償特約で自転車事故に対応できることがあります。
学生は「自転車保険がない」と思っても、こうした学校関係の保険や、親の保険によりカバーできることが多い印象です。
クレジットカードの付帯保険
クレジットカードの付帯保険として個人賠償保険がついていることがあります。
施設所有者賠償責任保険
事業者が業務活動中の事故に備えて入る保険ですが、業務活動における自転車事故にも対応します。
仕事中の事故では、この保険で対応することになります。
自転車保険の選び方
自転車保険の加入が義務化されましたが、新たに自転車保険に加入しなければならないのでしょうか?
すでに「個人賠償保険」に加入しており、自転車事故による損害賠償責任がカバーされていれば、新たに自転車保険に加入する必要はありません。
保険が二重になってしまい保険料が無駄になってしまうからです。
ただし、既に加入している個人賠償保険に「示談代行サービス」がついていないのであれば、「示談代行サービス」つきの自転車保険に加入することをお勧めします。
示談代行サービスというのは、自転車事故の示談交渉を保険会社が代行してくれるというサービスです。
自転車事故の当事者同士で話しをする必要がなく、自分で示談交渉を行う負担がありません。
一方で、示談代行サービスがないと、加害者が自分で示談交渉を行う必要があります。
被害者と示談交渉を行うというのは負担が重く、保険に入っているメリットが半減してしまいます。
個人賠償保険に入っていても示談代行サービスがついていないなら、新たに示談代行サービスつきの自転車保険に加入することを検討しましょう。
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自転車保険が役立つ場面
自転車保険が役立つ場面について解説していきます。
自転車事故の加害者になったとき
自転車事故の加害者となり、被害者に怪我をさせてしまったときには、自転車保険から賠償金が支払われます。
自分のお金で高額の賠償金を支払う必要がなく、自動車保険が大いに役立つ場面といえます。
また、示談代行サービスのある保険なら、保険会社の担当者が被害者対応をしてくれますので、不慣れな示談交渉をする必要もありません。
誰でも自転車事故の加害者となる可能性がありますので、自転車保険への加入は必須といえます。
なお、自動車の保険と異なり、自転車の保険では等級を気にする必要がありませんので、保険の使用を躊躇する必要はありません。
家族の保険を使用することができたり、ご自宅の火災保険に個人賠償特約がついている場合など、すぐには気づかないこともあるので確認するようにしましょう。
自転車事故の被害者になったとき
自転車事故の被害者になったときも、自転車保険が役立つ場面があります。
自転車同士の事故の場合、自分も怪我をしたけれど、相手も怪我をしてしまうというケースが少なくありません。
こうした事故では、相手から賠償金が支払われても、こちらからも賠償金を支払う責任が生じてしまい、結果的に手もとに残るお金が少なくなってしまいます。
自転車保険に加入していれば、相手への賠償金については自転車保険から支払われることになり、手もとに残るお金が減る心配がなくなるのです。
また、自転車事故でも使える「弁護士費用特約」が増えてきており、弁護士に損害賠償請求を依頼したときの弁護士費用が支払われます。
弁護士費用の負担なく弁護士に依頼することができ、損害賠償金の最大化を目指すことができますので、大いに役立つことになります。
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まとめ
各地で自転車保険の義務化が進んでいますので、自転車保険に加入せずに自転車に乗るのは絶対にやめましょう。
他の保険の特約として自転車保険に加入している場合でも、示談代行サービスのない保険ではメリットが半減なので、示談代行サービスつきの保険への加入を検討しましょう。