自転車事故で骨折した場合の損害賠償請求の流れはどのようなものでしょうか?
骨折の治療を続け、治療が一区切りとなったところで医師に後遺障害診断書を作成してもらい、保険会社に後遺障害の審査をするよう求め、その後に慰謝料などを含めて示談金の交渉をするというのが大きな流れになります。
軽い打撲等の怪我ではなく、自転車事故で骨折をしてしまった場合について、損害賠償請求をする方法について解説していきます。
このページで解決するお悩み
- 自転車事故で骨折したときの損害賠償がわかる
- 骨折事故で注意することがわかる
- 骨折事故の示談の流れがわかる
事故直後に警察へ通報
自転車事故では、まずは警察に通報することが必要となります。
事故の報告
自転車事故に遭ったら警察に報告する必要があります。
警察に報告することで、交通事故証明書を発行してもらうことができるようになり、事故が発生したことを証明できるようになります。
自転車事故について、警察に知らせずに解決すべきケースというのは考えられませんし、警察に報告するか迷う必要は全くありません。
参考:大阪府警察
人身事故としての届出
警察から、自転車事故を「物損事故」にするか「人身事故」にするか確認されます。
自転車事故を人身事故にするときは、警察に怪我の診断書を提出することになります。
警察から色々な説明を受けると思いますが、骨折のような重い怪我をしたのであれば迷わず人身事故にすべきと考えます。
自転車事故では、自転車に事故の痕跡が残りにくいことや、自転車が自動車よりも複雑な動きをすることから(急な進路変更なども容易です)、事故状況の争いになることが少なくありません。
自転車事故を人身事故にしておけば、実況見分調書を入手できるようになり、事故状況の争いになったときに有利に使える場合があります。
骨折をした事故でも物損事故になっていることがありますので、きちんと警察に確認するようにしましょう(交通事故証明書で確認することもできます)。
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骨折について病院での治療
自転車事故で骨折をしたら医師の指示に従い治療を継続しましょう。
治療中に問題となることを解説していきます。
通院の注意点
自転車事故で骨折をしたときは、骨折の箇所や状態によって手術をすることもありますし、入院をせずに通院だけで治療をしていくこともあります。
骨折の治療は、定期的に通院して骨癒合(骨のくっつき)の状態を確認したり、関節の可動域を回復させるためにリハビリを行って行くことになりますが、医師の指示にしたがって治療を継続することが重要です。
治療が長期間になるからといって中断してしまったり、きちんとリハビリを行わないと、適正な賠償を受けられない可能性があります。
治療費の支払い
自転車事故で病院に通ったときに、治療費はどのように支払われるのでしょうか。
自動車事故であれば、保険会社が病院に直接支払ってくれるのが一般的です。
自転車事故の場合は、自賠責保険がないからという理由で、被害者が一旦立替え払いしてから保険会社に後日支払いしてもらうことも少なくありません。
被害者としては、健康保険を使用して3割を支払い、保険会社に1か月程度まとめて請求することになります。
労災保険を使える、通勤中の事故や、仕事中の事故の場合、健康保険で治療を受けることはできません。
自転車事故で労災保険を使うことのメリットは大きいですし、労災保険を使えるときは健康保険を使えないというルールになっているので、きちんと労災の手続きをするようにしましょう。
通院交通費
怪我をして通院する通院交通費を請求することもできます。
電車やバスなどの公共交通機関であれば特に問題なく損害として認められますが、タクシー代については、必要性、相当が求められます。
保険会社と交渉するときも、足の骨折であればタクシー代も認められやすいですが、上半身の骨折であれば必要性を丁寧に説明する必要があります。
また、タクシー代は領収書がないと支払いを受けられませんので、領収書はなくさないように保管しておきましょう。
休業損害
自転車事故による骨折で仕事を休むときは、保険会社に対して休業損害を請求することができます。
怪我で仕事ができないと生活に困ってしまいますから、治療中でも保険会社に請求することができます。
保険会社も骨折であれば休業損害を認めてくれやすいですが、毎月のように治療経過等を確認されますので、怪我の状況や治療状況を丁寧に説明するようにしましょう。
また、保険会社が病院に仕事をできるか確認することもありますので、安易に回答してしまわないよう医師に相談しておくことも考えられます。
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骨折の治癒後に症状固定
しばらくは骨折の治療に専念し、治療終了(症状固定)のタイミングで損害賠償請求のための準備を行います。
症状固定のタイミング
症状固定とは、治療により怪我が完治した状態や、治療を続けてもこれ以上は良くならないという状態をいいます。
医師が治療をしているのですから、「怪我が治ったか」については医師が判断することになりますが、「症状固定」というのは損害賠償における法的な評価なので、医師の判断と完全に一致するわけではありません。
つまり、病院でリハビリは続けるけれど、損害賠償請求との関係では「症状固定」としてしまい、後遺障害の主張をしていくという判断をすることもあります。
骨折については、骨折箇所の状態を経過観察する期間や、リハビリを続ける期間など幅がありますので、医師と相談しながら「症状固定」の適切なタイミングを検討する必要があります。
また、保険会社が「もう症状固定である」として治療費の支払いを打ち切ることもありますが、医師が治療継続の必要があると判断しているのなら、健康保険を使用して通院を継続すべきです。
後遺障害診断書の作成
骨折について症状固定のタイミングを迎え、痛みや関節の可動域の制限(動きの制限)などが残っているときは、後遺障害診断書を作成してもらいます。
後遺障害を主張するためには後遺障害診断書が必要とされるためです。
後遺障害診断書を作成してもらうときは、痛みなどの自覚症状をきちんと書いてもらい、可動域も「自動」「他動」を測定し記載してもらいます。
痛みなどの自覚症状は、後遺障害診断書に記載がなければ「痛くない」という評価になってしまいますので、漏れなく伝える必要があります。
骨に変形があるときは、変形障害の欄に丸をつけてもらうことも忘れてはいけません。
また、骨が変形や癒合不全を証明するためにCT画像を撮影することもありますし、後遺障害の認定を受けるために必要な検査もあります。
自賠責保険の認定手続きでは、後遺障害診断書に不備があるときでも調査事務所が追加調査(医療照会等)をしてくれますが、自転車事故では不備のあるまま保険会社に審査されてしまう可能性があるため注意が必要です。
後遺障害の認定
自転車事故では自賠責保険で後遺障害の認定を受けることができないため、保険会社が自社内で認定を行ったり、労災保険で後遺障害の認定を受けることになります。
労災保険が使えるときは、先に労災保険で認定を受けた上で保険会社と交渉した方がよいでしょう。
保険会社も、労災保険の認定に拘束されることはありませんが、これを尊重した判断を期待することはできます。
また、労災で後遺障害が認定された理由について、個人情報開示請求により資料を入手することができますので、これを交渉に利用することが考えられます。
保険会社が認定する後遺障害に納得できないときは、訴訟による解決を検討する必要があります。
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損害賠償について示談交渉
怪我の治療が終了し、後遺障害についても争いがない状態となれば、具体的な賠償金額について保険会社と交渉を始めることになります。
保険会社との交渉で注意することを解説していきます。
慰謝料
自転車事故の慰謝料には、傷害慰謝料(入通院慰謝料)と後遺障害慰謝料があります。
傷害慰謝料(入通院慰謝料)というのは怪我をしたことによる慰謝料で、後遺障害慰謝料というのは後遺障害が認められることによる慰謝料です。
どちらの慰謝料も、算定する基準として「自賠責基準」、「保険会社基準」、「裁判基準」の三つの基準があり、どの基準を採用するかで金額が大きく異なることになります。
裁判基準で計算した慰謝料が一番高額ですが、保険会社からの示談案では自賠責基準か保険会社基準で計算された慰謝料額になっているはずです。
また、骨折では治療期間のわりに通院日数(病院に行った日数)が少ないことが多く、保険会社は通院日数を理由に驚くほど低額の傷害慰謝料(入通院慰謝料)を提示してくることがあります。
このままの慰謝料額で示談をしてしまうと損をしてしまう可能性があるので、示談をする前に弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に依頼すると弁護士費用の負担がありますが、それでも慰謝料が増額された方が得をするという場合が多いですし、自転車事故で使える弁護士費用特約があれば、弁護士費用を負担せずに弁護士に依頼することができるためです。
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後遺障害逸失利益
自転車事故で後遺障害が認められると、仕事をする能力が低下したとして後遺障害逸失利益を請求することができます。
骨折した事案では大きな後遺障害が残ることも多く、後遺障害逸失利益が争いになることは少なくありません。
後遺障害逸失利益は、骨折事案の賠償金の大きな割合を占めることもあり、納得できないときはきちんと争わないといけません。
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過失割合
自転車事故でも、被害者に過失があるときには過失割合に応じて損害賠償金が減らされてしまいます。
骨折したときの賠償金額は、過失割合によって大きく変わってしまいますので、過失割合が大きな争いとなることが少なくありません。
また、骨折事故では、自転車の速度が争いになることもよくあります。
自転車事故の過失割合は、どのような事故状況であり、その事故状況をどのように評価するかを検討することになり、被害者がご自身で保険会社の主張に反論していくのは困難です。
過失割合の争いが大きいときは、自転車事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
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まとめ
自転車事故で骨折をしたときは、きちんと治療を受け、症状が残るのであれば後遺障害診断書を作成してもらい、適正な後遺障害の主張を行う準備が重要となります。
また、保険会社は慰謝料について低い金額を提示することが予想されますので、慰謝料の増額交渉を行う必要もあります。
後遺障害の主張など、個人で損害賠償請求をしていくのは難しい問題があります。
骨折については治療中から損害賠償請求に向けた対応をする必要がありますので、早めに自転車事故を専門とする弁護士にご相談下さい。
西宮原法律事務所の
顧問医のご紹介
顧問医師
濱口 裕之/はまぐち ひろゆき
西宮原法律事務所の顧問医師を務めている濱口裕之です。交通事故被害者の皆様にお伝えしたいことがあります。後遺障害認定においては、主治医が作成する後遺障害診断書や画像検査、各種検査がとても重要です。しかし、多忙な主治医の中には、後遺症を正確に反映した診断書の作成や、後遺障害を証明するために必要な画像検査や各種検査を積極的に提案してくれないケースも珍しくありません。
私が代表を務めているメディカルコンサルティング合同会社は、西宮原法律事務所から依頼を受けた交通事故被害者の方々を、交通事故に詳しい各科の専門医が作成する画像鑑定や医師意見書などでバックアップしています。
私たちは、西宮原法律事務所と連携して、多くの案件で交通事故被害者の後遺障害を証明してきました。このページをご覧になっている交通事故の被害者の方々が、適正な損害賠償を受けられるように、私たちが全力でサポートいたします。安心して西宮原法律事務所にご相談ください。
資格および所属 | メディカルコンサルティング合同会社 代表医師 兼 CEO 医学博士 日本整形外科学会専門医 日本整形外科学会脊椎脊髄病医 日本リウマチ学会専門医 日本リハビリテーション医学会認定臨床医 |
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