自転車事故でも、被害者が大きな怪我をしまったり、被害者が亡くなってしまい高額の損害賠償が認められることがあります。
自転車同士の交通事故、自転車と歩行者の交通事故であっても、被害が大きければ賠償金も大きなものになるためです。
自転車事故で高額な賠償金が認められるときの内訳ですが、治療費だけでなく高額な慰謝料や逸失利益が認められることになります。
そうした高額の賠償が認められた事例を紹介していきます。
自転車同士の事故の事例
自転車同士の事故で高額の損害賠償が認められた事例です。
9266万円 東京地裁平成20年6月5日判決
車道を自転車で走行していたところ、歩道から車道に進入してきた自転車と衝突し、重大な後遺障害を残したという事故です。
裁判所は、言語機能の喪失のほか,右上肢機能全廃,右下肢機能全廃の障害を内容とする後遺障害により、労働能力を100%失ったものと認め、後遺障害逸失利益として9522万1599円を認定しました。
その他、治療費や慰謝料を加え、過失相殺後の金額として9266万円の請求を認めたものです。
3138 万円 さいたま地裁平成 14 年2月15日判決
自転車同士が交差点で衝突した事故で、被害者は頭蓋骨骨折等の傷害を負い死亡してしまった事故です。
裁判所は、遺族から損害賠償請求につき、加害者に合計3138万円の支払い義務を認めました。
自転車と歩行者の事故
自転車と歩行者の事故で高額の損害賠償が認められた事例です。
9521万円 神戸地裁平成25年7月4日判決
小学生が自転車で走行し、歩行者と正面衝突した事故です。
被害者は急性硬膜下血腫、脳挫傷、頭蓋骨骨折等の傷害を負い、後遺障害により労働能力を10割喪失したとして、慰謝料、逸失利益等で高額の賠償金となったものです。
子どもの事故について、母親への請求が認められたことからも注目された裁判例です。
5438万円 東京地裁平成19年4月11日判決
自転車で高速度で信号を無視して交差点に進入し、青信号で横断歩道を横断中の歩行者に衝突した事故です。
被害者は頭蓋内損傷の怪我をして亡くなりました。
裁判所は、逸失利益2130万7841円、慰謝料2600万などを含め、5438万円の請求を認めました。
4746万円 東京地裁平成26年1月28日判決
自転車で赤信号の交差点に進入し、横断歩道を青信号で横断中の歩行者に衝突した事故です。
裁判所は、死亡逸失利益1536万0506円、死亡慰謝料2300万0000円を含む4746万円の請求を認めました。
3400 万円 大阪地裁平成 14 年6月11日判決
自転車が高速度で交差点を左折し、対向自転車と衝突したという事故です。
裁判所は、逸失利益1065万1853円、死亡慰謝料2000万円を含む約3400万円の請求を認めました。
賠償金が高額となる理由
自転車事故で被害者が大きな怪我をしたときに、賠償金が高額となる理由を説明します。
慰謝料
自転車事故で大きな怪我をすると、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料が高額となります。
紹介する事例でも、慰謝料として大きな金額が認められていることがわかります。
関連するページ
逸失利益
自転車事故で後遺障害が認められたり、被害者が死亡された場合には、高額の後遺障害逸失利益、死亡逸失利益が認められることがあります。
これは、本来であれば仕事をして稼ぐことができたお金が損害として認められるものなので、被害者の年齢が若いときや、重大な障害が残り仕事をする能力が大きく低下したときなどに高額となります。
関連するページ
自転車事故の損害賠償責任と自己破産
自転車事故の加害者となったときに、自転車保険に加入していれば賠償金を支払う必要はありません。
自転車保険から保険金として支払われるためです。
では、自転車保険に加入していない状態で、高額の賠償金を支払う責任が生じるとどうなるのでしょうか。
このような場合、自己破産を検討することになりますが、破産法253条1項3号には以下の規定があります。
第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
(略)
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
引用元:e-GOV法令検索
破産をしても、故意又は重大な過失で他人を怪我させたり、死亡させてしまったときの損害賠償責任については、責任を免れることができないとされています。
ここで、「重大な過失」というのは、「故意に比肩する程度に重い過失」とされていますので、一般的な自転車事故では免責が認められることになります。
しかし、自転車事故であっても過失が重い事故はあり、そうした事故について免責を認めないとした裁判例もあります。
加害者は、薄暗い歩道上を無灯火で、時速約25kmから30kmという原付バイクほどの危険な速度で走行させ、安全確認を怠って事故を発生させたとして、免責が認められませんでした。
やはり、自転車に乗るのであれば、自転車保険に加入することは必須であるといえます。
まとめ
自転車事故でも被害者が大きな怪我をして高額の賠償金が認められることがあります。
自転車に乗るのなら必ず自転車保険に加入するようにしましょう。