歩道において自宅門から出た歩行者に、坂道を下る自転車が衝突した事故

横浜地方裁判所平成29年7月7日判決(ウエストロー)

事案

歩道上において、自宅の門から出た歩行者に、坂道を下る自転車が衝突したという、自転車対歩行者の交通事故です。

以下の事情が考慮されているので、自転車事故の過失割合でお悩みの方は参考にしてください。

  • 自転車と歩行者の歩道上の事故
  • 歩行者の修正要素
  • 被害者が高齢者
自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者0%対自転車100%

歩行者0% 対 自転車100%

裁判所の判断

裁判所は以下のとおり判断して過失相殺を認めませんでした。

自転車は、歩道を通行することができる場合においても、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分があるときは、当該指定部分)を徐行しなければならず、また、自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならないとされている(道路交通法63条の4第2項本文)。」

「被告は、被告自転車の避けられないタイミングで原告が被告自転車の前方に急に飛び出したものであると主張するが、これを認めるに足りる証拠はなく、他方、原告が本件事故当時73歳であったことや、上記の自転車に対する法規制の点も考慮すると、本件事故の発生につき、原告に過失があったとすることはできず、過失相殺がされるべきものということはできない。」

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解説

概要

自転車が歩道を通行するときは、中央から車道寄りを徐行しなければならず、これに違反した走行は過失として評価されます。

本件では、歩行者の急な飛び出しも認められないとして、過失相殺を行わなかったものです。

歩道で歩行者の過失が認められるケースは限定的なので、保険会社から過失相殺の主張をされてもきちんと争うことが重要です。

基本過失割合について

歩行者が歩道へ進入した事故

自転車と歩行者の事故の過失割合については、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」で基本過失割合と修正要素が示されています。

歩行者が歩道に進入し、直進自転車が衝突した事故の基本過失割合は、歩行者0%対自転車100%とされています。

歩道は歩行者が最優先される場所なので、基本的に歩行者には過失は認められないとしているのです。

歩道の通行について

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

自転車が歩道を通行するときでも、自転車は歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。

こうしたルールがあることを踏まえた判断を行ったものです。

⇒自転車の歩道通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。

高齢者修正について

被害者が高齢者であるときは、高齢者であることを理由に過失割合を小さくする修正が行われます。

これは弱者保護を根拠にするものなので、加害者が高齢者であることを理由に被害者の過失割合が大きくなることはありません。

本件でも被害者が73歳であることを考慮しています。

  • 自転車が歩道を通行する際のルールを守っていたかを重視した
  • 歩行者の飛び出しについては、これを認める証拠がないとして考慮しなかった
  • 被害者の年齢を踏まえ高齢者修正を行った

類似の裁判例

裁判例①

歩道において店舗から出てきた歩行者に自転車が衝突した事故の裁判例です。

歩行者が歩道に進入した自転車事故であることが共通しており参考になります。

歩道において店舗から出てきた歩行者に自転車が衝突した事故

裁判例②

歩道を横切った高齢者に自転車が衝突した事故の裁判例です。

歩行者と自転車、それぞれの注意義務について検討しています。

荷物を運びながら歩道を横切った高齢者に自転車が衝突した事故

裁判例③

コンビニから歩道に出てきた歩行者に、自転車が衝突したという事故の裁判例です。

自転車の歩道の走行方法や、事故現場の状況を考慮しています。

歩道において歩行者に自転車が衝突した事故

裁判所が認定した慰謝料と損害額

裁判所は、入通院慰謝料136万円を含む328万8441円を損害として認め、過失相殺を行いませんでした。
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