自転車同士の出会い頭の事故で、加害者が下り坂で高速度であった事故

東京地方裁判所平成29年10月31日判決(ウエストロー)

事案

歩道上における自転車同士の出会い頭の衝突事故で、加害者の自転車が下り坂で高速度で走行し、被害者が高齢者であるという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されているので、自転車事故の過失割合でお悩みの方は参考にしてください。

  • 自転車同士の出会頭の衝突事故
  • 下り坂を高速度で走行
  • 被害者が高齢者である
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車20%対自転車80%

自転車20% 対 自転車80%

裁判所の判断

裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。

「被告には、自転車で本件事故現場を走行するに当たり、周囲の歩行者や自転車の動静を注視して、歩行者や自転車に接触しないよう安全に走行すべき注意義務があったのに、下り坂を走行して通常より速い速度で走行したまま、右方の安全確認を怠って、直前まで原告車の存在に気付かずに原告車に被告車を接触させた過失がある。」

「一方、原告も、自転車で本件事故現場を走行するに当たり、周囲の歩行者や自転車の動静を注視して、歩行者や自転車に接触しないよう安全に走行すべき注意義務があったのにこれを怠った過失がある。」

「上記のとおりの本件事故の態様、双方の過失の内容、程度、原告が高齢者であったこと、被告が下り坂を走行し通常よりも速い速度で走行していたこと等を勘案すると、双方の過失割合は、原告2割、被告8割とするのが相当である。」

電話での簡単なご質問にも対応!お気軽にご相談ください
お電話で無料相談
LINEで無料相談

解説

概要

自転車同士の出合い頭の衝突事故ですが、一方が下り坂を高速度で走行していたことや、高齢者修正を行った結果、20%対80%の過失割合となったものです。

安全運転義務について

自転車の運転者は「他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」とされており、安全運転義務が課せられています(道路交通法70条)。

自転車の周囲の安全を確認しながら走行する義務は、こうした安全運転義務を根拠とするものです。

原告、被告とも、こうした安全運転義務違反があるとされました。

自転車の速度について

自転車の一般的な速度は時速約15㎞とされ、自転車が徐行する速度(直ちに停止できるような速度)は時速6~8㎞と考えれています。

被告は、下り坂を通常より速い速度で走行したことが過失とされています。

自転車の速度については、加害者が認めている場合もありますが、争いがあるときは刑事記録などによって立証することを検討します。

⇒自転車の速度については自転車事故で問題となる自転車の速度は?で解説しています。

高齢者修正について

被害者が高齢者であるときは、高齢者であることを理由に過失割合を小さくする修正が行われます。

これは弱者保護を根拠にするものなので、加害者が高齢者であることを理由に被害者の過失割合が大きくなることはありません。

  • 双方とも安全運転義務違反が認められるとした
  • 下り坂を高速度で走行したことを重視して重い過失ととらえている
  • 被害者が高齢者であることを修正要素としている

類似の裁判例

裁判例①

自転車同士の出会い頭の事故で、一方の自転車が高速度で走行し、両車の速度差が大きいことを重視した裁判例です。

高速度で走行した自転車の事故であることが共通しており参考になります。

自転車同士の出会い頭の衝突事故で、一方が高速度で直進していた事故

裁判例②

自転車が下り坂を無灯火で携帯電話を操作しながら走行し、対面の歩行者に衝突した事故の裁判例です。

自転車が下り坂を走行していることが共通しており参考になります。

自転車が下り坂を走行し、対向歩行者に衝突した事故

裁判例③

自転車が下り坂で二人乗りをして、交差点で単車に衝突したという事故の裁判例です。

自転車の下り坂走行が共通しており参考になります。

自転車が下り坂で二人乗りをし、交差点に進入した事故

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、傷害慰謝料120万円を含む234万0462円を損害として認め、過失相殺として20%を減額後の金額を187万2369円としました。

関連するページ

  1. 自転車事故の慰謝料の解説
  2. 自転車事故の示談までの流れ
  3. 自転車事故の損害賠償請求の疑問を解決