病気や怪我をしたときには健康保険で病院に通うのが一般的ですが、交通事故では健康保険を使えないのでしょうか?
自転車事故でも健康保険を使えますし、被害者にも過失があるときは健康保険を使用した方が賠償金で得をする可能性があります。
ただし、通勤中の事故などで労災保険を使えるときは、健康保険を使用することはできません。
自転車の交通事故で健康保険を積極的に使うべきとき、例外的に健康保険を使えないときについて解説します。
このページで解決するお悩み
- 自転車事故でも健康保険を使えることがわかる
- 健康保険を使う方法がわかる
- 自転車の交通事故で健康保険を使うメリットがわかる
自転車事故での健康保険の使用
自転車事故の怪我について、健康保険を使用して治療を受けることもできます。
全国健康保険協会の説明を引用します。
Q6:交通事故でケガをしました。健康保険は使えますか?
A6:交通事故、けんか、他人の飼い犬にかまれたときなど第三者の行為によってケガや病気をし た場合でも、仕事中または通勤途上のもの以外であれば、健康保険を使って治療を受けることができます。その場合、必ず「第三者行為による傷病届」をご加入の協会けんぽ支部へ提出してください。
引用元:全国健康保険協会、よくある質問
病院によっては、自転車事故では健康保険を使用できないと言われることもありますが、窓口で「事故でも健康保険を使えると聞きました」と説明しましょう。
ホームページに「交通事故では健康保険を使えません」と書いている病院でも、きちんと話しをすれば健康保険で治療を受けられるはずです。
それでも健康保険を使わせてくれないのであれば、別の病院で治療を受けることを検討することも考えられます。
また、自転車の交通事故の治療で健康保険を使うかどうかは自由なので、保険会社に健康保険を使うよう求められても、これに従う義務はありません。
ただし、被害者にとって健康保険を使用した方が得なケースは少なくありませんので、健康保険の使用を積極的に検討しましょう。
関連するページ
健康保険を使う場合の手続
健康保険を使用した場合、健康保険組合などに第三者行為災害の届出をする必要があります。
届出の際には、事故状況、加害者の連絡先、加害者の保険会社の情報などを申告することになりますが、特に難しい手続ではありません。
保険会社から必要な書類が送られてきて、保険会社が手続をしてくれることもあります。
健康保険組合などは、第三者行為災害の届出に基づいて、加害者(保険会社)に対して求償請求を行うことになります。
健康保険を使うと、加害者が支払うべき治療費も支払われることになるため、その分を加害者(保険会社)に請求するのです。
そのため、加害者(保険会社)が7割部分について支払いを免れて得をするということにはなりません。
健康保険の使用について、「加害者や保険会社が得をするなら嫌だなあ」と思われるかもしれませんが、そのようなことはないのです。
健康保険を使うときの治療費の支払い方法
病院で健康保険を使用すると自己負担分は3割となります。
この3割について、保健会社が病院に直接支払う場合と、被害者が病院窓口で支払ったのちに保険会社に請求する場合があります。
保険会社は「自賠責保険がないので直接払えません」と説明することもありますが、治療費の直接払いと自賠責保険は関係ありません。
まずは、保険会社に病院へ直接払いをするよう交渉しましょう。
保険会社が支払いを拒否する場合や、病院が健康保険を使用した直接払いに対応していないときは、立て替え払いをして1月ごとに請求することになります。
健康保険で治療を受けた場合の示談
被害者にも過失がある場合の処理
加害者(保険会社)と示談交渉をするときに、健康保険で支払われた7割部分(自己負担3割を除く部分)の処理について不安に思われるかもしれません。
自転車事故の損害賠償請求では、7割部分は健康保険組合などと加害者(保険会社)が解決すべき問題として、自己負担3割についてだけ損害として扱う処理が一般的です。
つまり、被害者に過失があったとしても、自己負担3割について過失相殺を行えばよく、7割部分も含めて過失相殺を考える必要はありません。
病気で治療を受けるときは7割部分を無視するわけですから、加害者のいる事故で病気よりも不利に扱われることはないと考えれば理解しやすいかと思います。
自転車の交通事故の裁判でも、損害として請求する治療費は3割部分だけとして、7割部分は金額を計上しないのが一般的です。
保険会社の作成する損害賠償案では、治療費の欄に7割部分も計上されてしまっていることがありますが、被害者にこれを負担させないような処理をしているはずです。
示談の前の連絡
第三者行為災害の届出を行うと、加害者と示談をするときは事前に連絡する旨の誓約書を提出することになります。
加害者(保険会社)と示談をする前には、どういった内容(過失割合等)で示談をするのか連絡するようにしましょう。
保険会社が対応しているときには、保険会社と健康保険組合等が直接やりとりをしていることが一般的なので、「ご連絡ありがとうございます。過失割合はどうなりました?」と聞かれる程度で、特に難しい手続きが必要なわけではありません。
関連するページ
自転車事故で健康保険を使うべき場合
自転車事故で治療を受けるときに、健康保険を使うべきケースについて解説していきます。
被害者にも過失がある事故
被害者にも過失がある事故では、被害者が治療費の一部を負担しないといけなくなります。
例えば、被害者にも5割の過失があるという事故では、被害者は治療費の5割を自分で負担しないといけないのです。
保険会社が治療費の全額を一旦支払っている場合、示談のときに慰謝料から治療費(被害者負担部分)を差し引かれてしまいますので、もらえる慰謝料などが驚くほど少なくなってしまう可能性があります。
こうした被害者にも過失がある事故では、健康保険を使用して治療費を低く抑えることで、示談のときにもらえるお金が増えることが期待できます。
健康保険を使うと、自由診療よりも治療費全体が安くなるだけでなく、3割の部分の負担だけを考えればよくなるため、治療費の負担(過失割合に応じた負担)が大きく減るためです。
なお、治療の途中からでも健康保険に切り替えることは可能なので、病院に相談してみましょう。
関連するページ
加害者が保険に加入していない事故
加害者が保険に加入していない事故では、まずは被害者が治療費を立て替え払いする必要があります。
多額の治療費を立て替え払いするのは負担が大きいため、健康保険を使用して少しでも負担を軽くすべきといえます。
また、加害者に治療費を請求しても支払いを拒否されてしまうかもしれませんし、そもそも加害者に支払うお金がない可能性もあります。
被害者としては、加害者から回収できない可能性を考えて、治療費を低く抑えておくことは重要といえます。
自転車事故で健康保険を使えないとき
自転車事故でも、労働者が業務中や通勤中に自転車事故に遭った場合には、労災保険により治療費が支払われることとなり、健康保険を使用してはいけないとされています。
保険会社が治療費を支払う場合など、自由診療で治療を受けるのなら労災を申請しなくても問題はありませんが、健康保険を使用することは許されませんので注意しましょう。
労災で治療を受けることは、健康保険を使用して治療を受ける場合と比較して、特に不利益はありません。
むしろ、3割の負担部分がないわけですから、メリットが大きいといえます。
労災の手続きを面倒に思われるかもしれませんが、健康保険を使用することは許されないということを理解して、きちんと労災の手続きをとるようにしましょう。
なお、事故による治療が終了(症状固定)したのであれば、その後の治療費は労災から支給されることはありませんし、健康保険を使用して治療してもよいとされています。
また、事故がきっかけで症状が発生したと思われるときでも、医師が「これはさすがに事故と無関係でしょう」と判断したときには、労災ではなく健康保険で治療が行われることがあります。
労災については⇒通勤中の自転車事故で労災を使うべきか?
通勤中の事故で健康保険を使ってしまったときの対応
労災保険で治療費が支払われるべき事故で、健康保険を使用して通院を続けてしまった場合、どのように対応すればいいのでしょうか。
まず、病院に事情を説明し、これまでの治療についても健康保険から労災保険に切り替えて欲しいと伝えましょう。
病院が健康保険への請求を行っていない事故直後の段階であれば、全く問題なく労災へ切り替えることができます。
事故からしばらく通院を続けていたときは面倒ですが、病院が協力的な場合には、病院が健康保険の7割を返還し、労災保険へ満額請求し、被害者へ3割を返還するという手続きを行ってくれます。
病院が協力的でない場合は、被害者が一旦お金を立て替えなければならないのかという問題がありますが(立て替えなくてもよい手続はあります)、まずは速やかに病院に事情説明を行うことが重要です。
労災を使うべきなのに健康保険を使っていないか調査が行われることもありますし、面倒だからといって健康保険のまま治療を受け続けてはいけません。
まとめ
自転車の交通事故でも、第三者行為災害の届けを提出することにより、健康保険を使用して治療を受けることができます。
被害者の過失が大きい事故、加害者が無保険の事故など、健康保険を使用して治療を受けた方がよい事故があります。
ただし、通勤中の事故など、労災で治療費が支払われる事故では使うことができませんで注意が必要です。
西宮原法律事務所の
顧問医のご紹介
顧問医師
濱口 裕之/はまぐち ひろゆき
西宮原法律事務所の顧問医師を務めている濱口裕之です。交通事故被害者の皆様にお伝えしたいことがあります。後遺障害認定においては、主治医が作成する後遺障害診断書や画像検査、各種検査がとても重要です。しかし、多忙な主治医の中には、後遺症を正確に反映した診断書の作成や、後遺障害を証明するために必要な画像検査や各種検査を積極的に提案してくれないケースも珍しくありません。
私が代表を務めているメディカルコンサルティング合同会社は、西宮原法律事務所から依頼を受けた交通事故被害者の方々を、交通事故に詳しい各科の専門医が作成する画像鑑定や医師意見書などでバックアップしています。
私たちは、西宮原法律事務所と連携して、多くの案件で交通事故被害者の後遺障害を証明してきました。このページをご覧になっている交通事故の被害者の方々が、適正な損害賠償を受けられるように、私たちが全力でサポートいたします。安心して西宮原法律事務所にご相談ください。
資格および所属 | メディカルコンサルティング合同会社 代表医師 兼 CEO 医学博士 日本整形外科学会専門医 日本整形外科学会脊椎脊髄病医 日本リウマチ学会専門医 日本リハビリテーション医学会認定臨床医 |
---|