自転車同士の見通しの悪い交差点での出会頭の衝突事故
大阪地裁平成31年3月27日判決(ウエストロー)
事案
見通しの悪い交差点で、直進する自転車同士が衝突したという、自転車対自転車の交通事故です。
以下の事情が考慮されています。
- 見通しの悪い交差点
- 自転車の一時停止違反
- 交差点における左方車の優先
過失割合
自転車50% 対 自転車50%
裁判所の判断
裁判所は被告の過失について以下のとおり指摘しました。
原告の過失について以下のとおり指摘しました。
裁判所は、両者の過失を踏まえて、過失割合について以下のとおり判断しました。
解説
概要
自転車同士の交差点の衝突事故です。
双方に一時停止規制があり、双方とも一時停止を行ったが争いになりましたが、裁判所は事故現場の特殊性から一時停止の有無は過失割合に影響しないとしました。
また、交差点における左方車の優先から、過失に差が生じるかも問題となりましたが、自転車の運転には免許制度がなく必ずしも遵守されている現状にないことや、自転車は低速で回避措置も容易であることなどから、これを大きく評価することはできないとしました。
これらの事情などを考慮して、両車の過失割合を50%対50%としたものです。
基本過失割合
自転車事故の過失割合は「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」(赤本下巻 日弁連交通事故相談センター )というものを参考にし、過失割合について検討していくことが考えられます。
交差点における直進自転車同士の事故では、左方車の過失が45%対右方車の過失が55%とされています。
保険会社の主張する過失割合で考慮されていないときには指摘しましょう。
自転車の一時停止について
自転車も一時停止の指定のある交差点では一時停止をする義務があります。
本件では、一時停止場所から交差点内の安全確認が難しいことを理由に、一時停止の有無は過失割合に影響しないとしました。
あくまで交差点内の安全確認を十分に行ったかどうかを重視したということです。
⇒自転車の一時停止については自転車も交差点で一時停止の必要があるの?で解説しています。
- 安全確認のできる地点まで進行し、一時停止をして車両等の動静を確認する義務があった
- 一時停止線からは安全確認できないため、一時停止線での一時停止の有無は過失に影響しないと判断
- 自転車では交差点の左方優先は大きく評価できない
類似の裁判例
裁判例①
傘を差した自転車同士が、見通しの悪い交差点で衝突したという事故の裁判例です。
裁判例②
見通しのきかない交差点で自転車同士が衝突した事故の裁判例です。
裁判所が認めた慰謝料と損害額
裁判所は、通院慰謝料50万円を含む89万3197円を損害として認め、過失相殺として5割を控除後の49万6598円の請求を認めました。
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