スマホで通話をしたり、スマホの操作をしながら自転車に乗ることは違法なのでしょうか?
自転車でスマホを使う「ながら運転」については、道路交通法の改正により以下の厳しい罰則が科せられています。
ここでは、自転車とスマホの使用について、法律上の問題点について解説していきます。
スマホを使用しながら自転車を運転することは違法なのか?
携帯電話を使用しながら自転車を運転することは違法なのでしょうか?
道路交通法71条6項、大阪府道路交通規則13条により「携帯電話用装置を手で保持して通話」「画像表示用装置を手で保持してこれに表示された画像を注視」しながら自転車を運転してはならないとされ、罰則として5万円以下の罰金と定められていました。
自動車の「ながら運転」と比較して、自転車の「ながら運転」の罰則は非常に軽いものだったのです。
しかし、道路交通法の改正により、令和6年11月からは自動車と同様に厳しい罰則が科せられることになっています。
自動車の「ながら運転」については道路交通法71条5号の5に規定されているのですが、条文で「自動車又は原動機付自転車」とされていたものが、改正により「自動車、原動機付自転車又は自転車」とされて自転車も同じように扱われることになったのです。
具体的には以下のとおり罰則が定められています。
①自転車を運転しながらスマートフォンで通話をしたり、画面を注視したとき
→6月以下の懲役または10万円以下の罰金(道路交通法118条1項4号)
②「ながら運転」で交通の危険を生じさせた場合
→1年以下の懲役または30万円以下の罰金(道路交通法117条の4第1項2号)
スマホを操作しながら自転車を運転することは、注意が散漫になるなど事故発生の危険が高まりますので、絶対にしないようにしましょう。
スマホを使用して自転車事故を起こしたときの過失
スマホを使用して自転車の交通事故を起こした場合、過失割合はどのようになるのでしょうか。
自転車事故の損害賠償請求では、被害者の損害がそのまま賠償金として認められるのではなく、過失割合に応じて賠償金が減額されることになります。
関連するページ
過失割合の考え方や、参考となる裁判例について解説していきます。
自転車対歩行者の事故
自転車と歩行者の事故の過失割合については、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」で基本過失割合と修正要素が示されています。
自転車をスマホを使いながら運転していたことは、自転車運転者の「著しい過失」という修正要素とされており、基本過失割合から10%の修正をする(自転車側の過失を重くする)ことになっています。
スマホの通話や操作は違法ですし、運転に影響を与えて事故発生の危険を高めるため、このような扱いとなっているのです。
自転車対自転車の事故
自転車同士の事故の過失割合については、自転車と歩行者の事故と違い別冊判例タイムズ38に記載がありません。
そこで、「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」(赤本 下巻 )というものを参考にし、過失割合について検討していくことになります。
自転車をスマホを使いながら運転していたことは、片手運転よりも危険であるため「重過失」と評価して、基本過失割合から20%の修正を行うべきという考えが示されています。
片手でハンドルを操作することで運転が不自由になるだけでなく、周囲への注意や配慮を欠きながらの運転になることを重視した考えです。
関連する裁判例
自転車運転者がスマホを操作していた事故について、参考になる裁判例を紹介します。
裁判例①
⇒自転車で下り坂を無灯火、携帯電話を操作しながら対向歩行者に衝突した事故
裁判例②
⇒自転車同士の歩道上の正面衝突事故で,一方がスマホを操作中だった事故
加害者がスマホを操作していたことの証明方法
加害者がスマホを操作して事故を起こしたことを証明するには、どうしたらよいのでしょうか。
まず、加害者が保険会社に対して正直に申告していることが考えられます。
この場合、保険会社もスマホ操作を前提にして過失割合を検討することになります。
加害者が保険会社に申告していなくても、警察に話しているときは刑事記録に記載されている可能性があります。
事故について警察で作成された刑事記録を入手し、「スマホを見ながら進行した地点」などといった記載がないか確認する必要があります。
まとめ
スマホで通話したり、操作したりしながら自転車に乗ることは違法です。
自転車事故が発生したときも、スマホの使用が過失とされてしまい、過失割合が重くなってしまいます。
これは、自転車に乗りながらスマホを使用することが事故発生の危険を高めるためですから、絶対にこのような運転をしないようにしましょう。