自転車同士の交差点での事故の過失割合は?

弁護士 髙橋裕也

執筆者:西宮原法律事務所

弁護士 髙橋裕也

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自転車同士の交差点での事故の過失割合

自転車同士の交差点での事故は、双方に過失があるとされ、過失割合について大きな争いになることが少なくありません。

自転車の交通事故の損害賠償請求では、被害者にも過失があるとされると賠償金が減らされてしまいますので、過失割合は極めて重要な意味を持ちます。

ここでは、自転車同士の交差点での事故の過失割合について解説していきます。

このページで解決するお悩み

  1. 自転車同士の交差点での事故の過失割合がわかる
  2. 自転車同士の事故の反論方法がわかる
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

赤信号の自転車と青信号の自転車の事故

事故の類型

信号機の設置された交差点で、青信号で交差点に進入した自転車と、赤信号で交差点に進入した自転車の事故です。

自転車同士の赤信号と青信号の事故

基本過失割合

A青信号車B赤信号車
0%100%

青信号を走行してきた自転車の過失は0%で、赤信号を走行してきた自転車の過失は100%とされます。

信号の赤信号、青信号の表示については、自動車の運転免許を取得していない人でも知っており、誰でも守っていることです。

そのため、自転車同士の事故だからといって別の考え方をとることなく、自動車の事故と同じ過失割合とすべきと考えられています。

修正要素

基本過失割合の修正要素として以下のものがあります。

以下の事情が認められるときに、基本の過失割合を修正するということです。

  • Aが児童、高齢者・・・Aの過失割合-10%
  • Aに過失あり又はBの明らかな先入・・・Aの過失割合+10%
  • Aの著しい高速度進入・・・Aの過失割合+10~20%
  • Aの夜間無灯火・・・Aの過失割合+5~10%
  • Bが児童、高齢者・・・Bの過失割合-10%
  • Bの高速度進入・・・Bの過失割合+10%
  • Bの著しい高速度進入・・・Bの過失割合+10%
  • Bの夜間無灯火・・・Bの過失割合+5~10%
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赤信号自転車と黄信号自転車の事故

事故の類型

信号機の設置された交差点で、黄色信号で交差点に進入した自転車と、赤信号で交差点に進入した自転車の事故です。

自転車同士で赤信号と黄色信号の事故

基本過失割合

A黄信号車B赤信号車
20%80%

黄信号を走行してきた自転車の過失は20%で、赤信号を走行してきた自転車の過失は80%とされます。

青信号と赤信号の場合と異なり、黄信号の側にも20%の過失が認められます。

信号の赤信号、青信号の表示については、自動車の運転免許を取得していない人でも知っており、誰でも守っていることです。

そのため、自転車同士の事故だからといって別の考え方をとることなく、自動車の事故と同じ過失割合とすべきと考えられています。

修正要素

基本過失割合の修正要素として以下のものがあります。

以下の事情が認められるときに、基本の過失割合を修正するということです。

  • Aが児童、高齢者・・・Aの過失割合-10%
  • Aに過失あり又はBの明らかな先入・・・Aの過失割合+10%
  • Aの著しい高速度進入・・・Aの過失割合+10~20%
  • Aの夜間無灯火・・・Aの過失割合+5~10%
  • Bが児童、高齢者・・・Bの過失割合-10%
  • Bの高速度進入・・・Bの過失割合+10%
  • Bの著しい高速度進入・・・Bの過失割合+10%
  • Bの夜間無灯火・・・Bの過失割合+5~10%

参考になる裁判例

自転車同士の事故の過失割合を事例で解説します。

裁判例①

交差点を赤信号で横断した自転車と、赤点滅信号で進入した自転車が衝突した事故

信号のない交差点での事故(十字路)

事故の類型

信号の設置されていない十字路交差点で、交わる道路が同じくらいの幅である場合の事故です。

自転車同士の十字路の事故

基本過失割合

A左方車B右方車
45%55%

信号、一時停止規制のない同幅員の交差点において、自転車運転者は左方優先のことを知らない者もいることから(自転車運転は免許制ではないため)、左方車を45%、右方車を55%とし、丁字路交差点では40%対60%とする考えが示されています。

この事故態様では自動車同士の事故とは異なる考え方がとられています。

修正要素

以下の事情があるときに、基本の過失割合が修正されることになります。

  • Aの左側通行義務違反・・・Aの過失割合+10~20%
  • Aの通行禁止の歩道通行・・・Aの過失割合+10~20%
  • Aの高速度進入・・・Aの過失割合+10%
  • Bの左側通行義務違反・・・Bの過失割合+10~20%
  • Bの通行禁止の歩道通行・・・Bの過失割合+10~20%
  • Bの高速度進入・・・Bの過失割合+10%

参考になる裁判例

裁判例①

傘差し自転車同士が見通しの悪い交差点で衝突した事故

裁判例②

カーブミラーの設置された交差点で自転車同士が出会い頭に衝突した事故

裁判例③

自転車同士の出会頭の衝突事故で一方が傘を差していた事故

参考ページ

  1. 自転車が交差点を通行するときのルールは?
  2. 自転車が道路を通行するときのルールは?

信号のない交差点での事故(丁字路)

事故の類型

信号の設置されていない丁字路交差点で、交わる道路が同じくらいの幅である場合の事故です。

自転車同士の丁字路の事故

基本過失割合

A直進車B右(左)折車
40%60%

右左折自転車の過失が60%、直進自転車の過失が40%とされています。

交差点で右左折する自転車には、交差点内の安全を十分に確認する義務があるためです。

修正要素

以下の事情があるときに基本の過失割合が修正されます。

高速度進入などにより事故発生の危険が高められたといえるためです。

  • Aの左側通行義務違反・・・Aの過失割合+10~20%
  • Aの通行禁止の歩道通行・・・Aの過失割合+10~20%
  • Aの高速度進入・・・Aの過失割合+10%
  • Bの左側通行義務違反・・・Bの過失割合+10~20%
  • Bの通行禁止の歩道通行・・・Bの過失割合+10~20%
  • Bの高速度進入・・・Bの過失割合+10%

参考になる裁判例

裁判例①

直進自転車と右折自転車が見通しのよくない交差点で衝突した事故

裁判例②

丁字路交差点で自転車同士が衝突した事故

裁判例③

自転車同士の出会い頭の衝突事故で、一方が高速度で直進していた事故

裁判例④

直進自転車と左折三輪自転車が衝突した事故

裁判例⑤

左折自転車と直進自転車が出会頭に衝突した事故

参考ページ

  1. 自転車が交差点を曲がるときのルールは?

一時停止のある交差点での事故(十字路)

事故の類型

信号の設置されていない十字路交差点で、一方に一時停止の規制がある交差点で発生した、直進する自転車同士が出会頭に衝突した事故です。

 

自転車同士の十字路の事故で一時停止あり

基本過失割合

A一時停止の規制なしB一時停止の規制あり
30%70%

一時停止の規制がある側の自転車が70%、一時停止の規制がない側の自転車が30%の過失割合とされます。

自転車も一時停止をする義務があり、一時停止側の過失が重いとされるのです。

修正要素

以下の事情があるときに基本の過失割合が修正されます。

左側通行義務違反などにより事故発生の危険が高められたといえるためです。

  • Bの一時停止・・・Aの過失割合+20%
  • Aの左側通行義務違反・・・Aの過失割合+10~20%
  • Aの通行禁止の歩道通行・・・Aの過失割合+10~20%
  • Bの左側通行義務違反・・・Bの過失割合+10~20%
  • Bの通行禁止の歩道通行・・・Bの過失割合+10~20%

参考になる裁判例

裁判例①

交差点における自転車同士の出合い頭の衝突事故

裁判例②

自転車同士の出会い頭の衝突事故で一時停止違反があった事故

参考ページ

  1. 自転車も交差点で一時停止する義務があるの?

一時停止のある交差点での事故(丁字路)

事故の類型

信号の設置されていない十字路交差点で、右(左)折をする自転車の側に一時停止の規制がある場合の事故です。

自転車同士の丁字路交差点で一時停止ありの事故

基本過失割合

A直進車(規制なし)B右左折車(規制あり)
25%75%

一時停止の規制がある側の自転車が75%、一時停止の規制がない側の自転車が25%の過失割合とされます。

一時停止側は、一時停止をして交差点内の安全を確認する義務交差点を右左折するにあたり安全を確認する義務があるため、重い過失があるとされるのです。

修正要素

以下の事情があるときに基本の過失割合が修正されます。

左側通行義務違反などにより、事故発生の危険が高められたといえるためです。

  • Bの一時停止・・・Aの過失割合+20%
  • Aの左側通行義務違反・・・Aの過失割合+10~20%
  • Aの通行禁止の歩道通行・・・Aの過失割合+10~20%
  • Bの左側通行義務違反・・・Bの過失割合+10~20%
  • Bの通行禁止の歩道通行・・・Bの過失割合+10~20%

参考になる裁判例

裁判例①

一時停止違反の左折自転車と直進自転車が衝突した事故

まとめ

自転車同士の交差点での事故では、過失割合が争いになることが少なくありません。

自転車は自動車よりも複雑な動きをするため、具体的な事情を踏まえた判断をする必要があり、双方の見解が対立する傾向があります。

まずは、警察の記録などから事故状況を把握し、こちらに有利な事情がないか十分に検討することが必要となります。

弁護士 髙橋裕也

執筆者

西宮原法律事務所
弁護士 髙橋裕也

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2007年に弁護士登録後、大阪の法律事務所で交通事故事件を中心とした弁護士業務を行う。
弁護士として15年以上の経験があり、自転車事故の損害賠償事件を多く扱うとともに、自転車事故の専門サイトを立ち上げ、自転車事故の被害者に向けた情報を発信している。
大阪弁護士会の「分野別登録弁護士名簿」に「交通事故分野」で登録しており、大阪弁護士会のホームページに実務経験として自転車事故の解決実績を掲載している。

弁護士(大阪弁護士会所属 登録番号35297)

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