自転車の交通事故と自動車の交通事故の違いと注意点は?

弁護士 髙橋裕也

執筆者:西宮原法律事務所

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自転車の交通事故

自転車の交通事故では、自動車の交通事故と同じように対応すべき場面異なる対応が求められる場面があります。

自転車の交通事故について、事故の直後から示談の成立まで、注意すべきポイントを解説していきます。

このページで解決するお悩み

  1. 自転車事故と自動車事故の違いがわかる
  2. 自転車事故で特に注意することがわかる

警察への対応

警察への通報

自転車の交通事故でも、自動車の交通事故と同様に、事故が発生したことを警察に通報する必要があります。

大阪府警察の説明を引用します。

Q5 自転車で歩道を走行中に歩行者と接触し、歩行者が軽いケガをしましたが、交通事故の届出は必要ですか。
A5
自転車での交通事故であっても、警察への届出が必要です。

引用元:大阪府警、Q&Aコーナー

自転車の交通事故でも交通事故証明書が発行され、保険金請求や損害賠償請求のときに事故発生を証明する資料となります。

自転車の交通事故だからといって、警察に通報せずに済ましてしまうことのないよう注意しましょう。

人身事故で届出

自転車の交通事故では、被害者が大きな怪我をしても、警察で物損事故として扱われていることがあります。

自動車の交通事故でもあることですが、自転車の交通事故ではその傾向が強いように感じます。

警察に人身事故で届出をすると、実況見分などが行われ、実況見分調書は過失割合の争いで大きな意味を持つことになります。

事故で怪我をしたときには、物損事故ではなく、人身事故で届出をするようにしましょう。

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  2. 自転車事故は物損事故ではなく人身事故で届出すべき?
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病院での対応

病院への通院

自転車の交通事故でも、怪我をして病院に通えば治療費等を請求することができます。

怪我をしたのに病院に行かずに我慢していると、怪我をしていないのと同じ扱いをされてしまい、治療費等を請求できなくなる可能性があります。

自転車の交通事故で怪我をしたときには、きちんと病院で治療を受けるようにしましょう

病院

治療費の支払い

自動車の交通事故では、保険会社が治療費を病院に直接支払ってくれることが多く、被害者が窓口でお金を払う必要がありません。

自転車の交通事故では、保険会社が病院に治療費を直接支払ってくれず、被害者が一旦立替払いすることが少なくない印象です。

保険会社の担当者としては、自転車事故では自賠責保険がないため、病院に直接払いをする必要がないという発想のようです。

しかし、自賠責保険と、病院への治療費の直接払いは、直接的に関係する話ではありません。

自転車の交通事故でも、交渉によって直接払いに変更してもらえることがありますので、保険会社の担当者に話してみましょう。

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物損の請求

自転車の修理費

自動車の事故であれば、加害者の保険会社が自動車の修理費を確認してくれます。

保険会社の担当者が修理工場に行き、自動車の写真を撮影し、修理費について修理業者と協議(協定)することになります。

一方、自転車の交通事故では、自分で自転車屋へ行き修理見積りを作成してもらう必要があります。

保険会社が自転車の修理費について協議(協定)することはありません。

また、自転車の購入時期、購入価格を申告して、時価額が損害とされることもあります。

自動車はレッドブックという資料で時価額を算定しますが、自転車の場合は衣服やヘルメットなどと同様に減価償却という考え方で時価額を算定します。

物品の損害

自転車の交通事故でも、着衣やカバン、スマートフォンなどの物品損害を請求することができます。

購入価格、メーカー、購入時期などを申告するのですが、写真を求められることもあるので処分前に撮影しておきましょう。

保険会社との交渉

示談代行

自動車の保険では「示談代行サービス」があるため、被害者は保険会社の担当者と交渉することになります。

自転車事故でも、加害者が「示談代行サービス」のある保険に加入していれば、保険会社の担当者と交渉を行うことになりますが、「示談代行サービス」のない保険では加害者本人と示談交渉をする必要があります。

加害者本人と交渉するといっても、加害者経由で資料を保険会社へ提出し、保険会社が損害額を認定するという流れになります。

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自賠責保険がない

自動車の交通事故であれば、保険会社から示談案が示される前に、自賠責保険の被害者請求を行うことが考えられます。

まずは、自賠責保険で後遺障害の認定を受け、それに対応した自賠責保険金を受領するのです。

保険会社に対しては、自賠責保険金を「既払い金」として扱い、全損害金額と自賠責保険金額の差額を請求していくことになります。

一方、自転車の交通事故では自賠責保険がないため、自賠責保険の被害者請求をすることなく保険会社と交渉することになります。

相手の怪我

自転車同士の交通事故の場合、相手も怪我をしていることがあります。

自動車の交通事故であれば、多くの方は任意保険に加入しているはずなので、こちらの自動車保険を使用すれば大きな負担をすることはありません。

自転車の交通事故の場合、被害者が自転車保険に加入していないこともあります。

こうした場合、加害者に損害賠償請求ができる一方で、加害者からもこちらに請求できてしまうため、加害者に支払わらないといけないお金も意識しながら交渉する必要があります。

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包帯

後遺障害

後遺障害の主張

自転車の交通事故では自賠責保険で後遺障害の審査を受けることができません。

そのため、まずは加害者の保険会社が後遺障害の審査を行いこととなり、自社内で顧問医の意見を聞くなどして判断したり、自賠責調査事務所の後遺障害認定サポートを利用するなどして判断します。

また、業務中や通勤中の事故であれば、労災で後遺障害の認定を受け、その結果を踏まえて交渉することが考えられます。

保険会社は、労災の判断を尊重した賠償案を提示することもあれば、さらに自社内の審査を行った上で賠償案を示すこともあります。

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過失割合の争い

事故状況の把握

自転車の交通事故でも人身事故であれば実況見分調書を入手することができます。

実況見分調書で事故状況を確認することが重要です。

自動車の交通事故であれば、自動車の損傷状況について保険会社が報告書を作成しており、損傷の形状、入力方向等から事故状況を知ることもできます。

自転車の交通事故では、損傷の場所から衝突箇所、損傷の程度から衝突の衝撃を知ることができますが、自動車の交通事故のような報告書が保険会社により作成されることはありません。

過失割合の主張

自転車の交通事故の過失割合は、自動車の交通事故とは違った難しさがあります。

自転車と歩行者の事故の過失割合については、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」で基本過失割合と修正要素が示されています。

自転車同士の事故の過失割合については、自転車と歩行者の事故と違い別冊判例タイムズ38に記載がありません。

そこで、「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」(赤本 下巻)というものを参考にし、過失割合について検討していくことが考えられます。

自転車の交通事故は、類型的な事故ばかりではないため、過去の裁判例で類似の事故状況のものを探すのも重要となります。

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  1. 自転車事故の過失割合の裁判例
  2. 自転車事故の過失割合の解説
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

まとめ

自転車の交通事故では、自動車の交通事故と同じように対応すべき場面、違った対応が必要な場面があります。

自転車の交通事故に遭われたら弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士 髙橋裕也

執筆者

西宮原法律事務所
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2007年に弁護士登録後、大阪の法律事務所で交通事故事件を中心とした弁護士業務を行う。
弁護士として15年以上の経験があり、自転車事故の損害賠償事件を多く扱うとともに、自転車事故の専門サイトを立ち上げ、自転車事故の被害者に向けた情報を発信している。
大阪弁護士会の「分野別登録弁護士名簿」に「交通事故分野」で登録しており、大阪弁護士会のホームページに実務経験として自転車事故の解決実績を掲載している。

弁護士(大阪弁護士会所属 登録番号35297)

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