自転車と歩行者の事故の過失割合は?

弁護士 髙橋裕也

執筆者:西宮原法律事務所

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自転車と歩行者の事故の過失割合はどのように決められているのでしょうか?

歩道上の事故、横断歩道上の事故であれば、被害者の過失は0%、自転車の過失は100%とするのが基本過失割合です。

歩行者が道路を横断中であれば被害者の過失は20%、歩行者が道路の右端を歩いていれば被害者の過失は0%ともされています。

自転車事故の類型によって「基本過失割合」があり、これを「修正要素」により修正し、類似の裁判例も参考にしながら過失割合が決められることになります。

以下では、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」に記載されている「基本過失割合」を紹介していきたいと思います。

自転車の交通事故の過失割合の「修正要素」や「裁判例」についても簡単に紹介していますが、詳しくは自転車事故の過失割合の解説ページで解説していますので、こちらを参考にしてください。

このページでわかること

  1. 自転車と歩行者の事故の過失割合がわかる
  2. 過失割合が修正される場合がわかる
自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

信号機の設置されていない横断歩道上の事故

事故の類型

信号機の設置されていない横断歩道上で発生した事故です。

自転車と歩行者の信号のない交差点

基本過失割合

歩行者自転車
0%100%

歩行者の過失は0%、自転車の過失は100%とされています。

横断歩道を通過する自転車には重い注意義務が課せられ(道路交通法38条1項)、歩行者には絶対的ともいえる保護が与えられるためこのような考え方がとられます。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • 幹線道路・・・歩行者の過失割合+5%
  • 歩行者の直前横断、佇立・後退・・・歩行者の過失割合+5~15%
  • 歩行者の集団横断・・・歩行者の過失割合-5%
  • 歩車道の区別なし・・・歩行者の過失割合-5%
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横断歩道上の事故(横断歩道内)

事故の類型

横断歩道上の事故で自転車も車道を横断している事故です。

横断歩道の端から外側に1m~2m離れた場所や、横断歩道が停止車両で塞がれているときの車両の前後については、横断歩道と同じように考えてよいとされています。

自転車と歩行者の横断歩道上の事故

基本過失割合

歩行者自転車
0%100%

歩行者の過失は0%、自転車の過失は100%とされています。

歩行者は横断歩道内で絶対的に近い保護を受けているため、このような考え方がとられています。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • 歩行者の急な飛び出し・・・歩行者の過失割合+5%

参考になる裁判例

裁判例①

青信号で横断する歩行者と自転車が正面衝突した事故

裁判例②

横断歩道を横断中の歩行者に自転車が衝突した事故

横断歩道上の事故(自転車横断帯内)

事故の類型

横断歩道上の事故で自転車も車道を横断している場合ですが、自転車横断帯内で発生した事故です。

自転車と歩行者の自転車横断帯内の事故

基本過失割合

歩行者自転車
5%95%

歩行者の過失は5%、自転車の過失は95%とされています。

自転車横断帯は自転車が通行するためのものなので、歩行者にも過失があるとされるのです。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • 歩行者の急な飛び出し・・・歩行者の過失割合+5%

横断歩道付近の事故

事故の類型

車道を進行する自転車と、車道を横断する歩行者の事故で、横断歩道の付近で発生した事故です。

別冊判例タイムズ38では「横断歩道の付近」を「通常人ならば道路を横断するに当たって当該横断歩道を利用するであろうと考えられる距離範囲内」とした上で「おおむね幅員14m(片側2車線)以上の道路で、交通量が多く、車が高速で走行している道路にあっては、横断歩道の端から外側におおむね40mないし50m以内の場所を、それ以外の道路にあっては20mないし30m以内の場所を、それぞれ考えるのが妥当であろう」と説明されています。

自転車と歩行者の横断歩道付近の横断

基本過失割合

歩行者自転車
35%65%

歩行者の過失は35%、自転車の過失は65%とされています。

歩行者は、横断歩道の付近では、横断歩道によって道路を横断しなければならないとされているため(道路交通法12条1項)、歩行者にも重い過失が認められているものです。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • 幹線道路・・・歩行者の過失割合+10%
  • 横断禁止の規制あり・・・歩行者の過失割合+10%
  • 歩行者の直前横断、佇立・後退・・・歩行者の過失割合+10%
  • 住宅街、商店街・・・歩行者の過失割合-5%
  • 歩行者の集団横断・・・歩行者の過失割合-10%
  • 歩車道の区別なし・・・歩行者の過失割合-5%

横断歩道のない交差点(その直近)の事故

事故の類型

車道を走行する自転車と、車道を横断する歩行者の事故で、横断歩道のない交差点や、交差点の直近で発生したものです。

自転車と歩行者の横断歩道のない交差点の事故

基本過失割合

歩行者自転車
15%85%

歩行者の過失が15%、自転車の過失が85%とされています。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • 横断禁止の規制・・・歩行者の過失割合+5~10%
  • 歩行者の直前横断、佇立・後退・・・歩行者の過失割合+10%
  • 歩行者の集団横断・・・歩行者の過失割合-5%
  • 歩車道の区別なし・・・歩行者の過失割合-5%

参考になる裁判例

裁判例①

丁字路交差点を横断する歩行者に直進自転車が衝突した事故

裁判例②

交差点手前で道路を横断する歩行者に、交差点を直進する自転車が衝突した事故

道路横断中の事故

車道を走行する自転車と、車道を横断する歩行者の事故で、横断歩道の横断ではなく、横断歩道や交差点の近くでもない場所で発生したものです。

自転車と歩行者の道路横断中の事故

基本過失割合

歩行者自転車
20%80%

歩行者の過失が20%、自転車の過失が80%とされています。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • 幹線道路・・・歩行者の過失割合+10%
  • 横断禁止の規制あり・・・歩行者の過失割合+5~10%
  • 歩行者の直前直後横断、佇立・後退・・・歩行者の過失割合+10%
  • 歩行者の集団横断・・・歩行者の過失割合-10%
  • 歩車道の区別なし・・・歩行者の過失割合-5%

参考になる裁判例

裁判例①

道路の横断を開始した歩行者が自転車に右足を轢かれた事故

関連するページ

  1. 歩行者が道路を横断するルールは?

自転車が歩道を直進している場合の事故

事故の類型

自転車が歩道を直進していて歩行者に衝突した事故です。

自転車と歩行者の歩道直進での事故

基本過失割合

歩行者自転車
0%100%

歩行者の過失は0%、自転車の過失は100%とされています。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • 歩行者の急な飛び出し・・・歩行者の過失割合+5%

参考になる裁判例

裁判例①

歩道上で対向する自転車のハンドルが歩行者の腕に接触した事故

裁判例②

歩道上において急に向きを変えた歩行者に自転車が衝突した事故

裁判例③

歩道上で自転車が歩行者に正面から衝突した事故

裁判例④

歩道上の歩行者に自転車が後方から衝突した事故

裁判例⑤

歩道で携帯電話を使用する歩行者に自転車が衝突した事故

関連するページ

  1. 自転車は歩道を通行できるの?
  2. 自転車と歩行者の歩道上の事故の過失割合は?

自転車が路側帯を直進している場合の事故

事故の類型

自転車が路側帯を直進していて歩行者に衝突した事故です。

路側帯とは「歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によって区画されたもの」をいいます。

自転車は左側の路側帯を通行する義務がありますので、右側の路側帯を走行していれば著しい過失として修正要素になります。

自転車と歩行者の路側帯での事故

基本過失割合

歩行者自転車
0%100%

歩行者の過失は0%、自転車の過失は100%とされています。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • 歩行者の急な飛び出し・・・歩行者の過失割合+5~10%

参考になる裁判例

裁判例①

路側帯で無灯火の自転車が歩行者に正面から衝突した事故

裁判例②

路側帯において歩行者に自転車が正面から衝突した事故

歩行者に車道通行が許されていない場合の事故

事故の類型

自転車と歩行者が衝突した事故で、歩道と車道の区別のある道路において、歩行者に車道通行が許されていない場合の事故です。

自転車と歩行者の車道での事故

基本過失割合

歩行者自転車
25%75%

歩行者の過失は25%、自転車の過失は75%とされています。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • 幹線道路・・・歩行者の過失割合+5%
  • 歩行者のふらふら歩き・・・歩行者の過失割合+10%
  • 住宅街、商店街・・・歩行者の過失割合-5%
  • 歩行者の集団通行・・・歩行者の過失割合-10%

参考になる裁判例

裁判例①

自転車で下り坂を無灯火、携帯電話を操作しながら対向歩行者に衝突した事故

関連するページ

  1. 歩行者が道路を通行するときのルールは?

歩行者が道路右側端を通行している場合の事故

事故の類型

自転車と歩行者が衝突した事故で、歩道と車道の区別のない道路で、歩行者が道路右側端を通行している場合の事故です。

自転車と歩行者の道路右側端での事故

基本過失割合

歩行者自転車
0%100%

歩行者の過失は0%、自転車の過失は100%とされています。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • ふらふら歩き・・・歩行者の過失割合+5%

歩行者が道路左側端を通行している場合の事故

事故の類型

自転車と歩行者が衝突した事故で、歩道と車道の区別のない道路で、歩行者が道路左側端を通行している場合の事故です。

自転車と歩行者の道路左側端での事故

基本過失割合

歩行者自転車
5%95%

歩行者の過失は5%、自転車の過失は95%とされています。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • ふらふら歩き・・・歩行者の過失割合+5%
  • 歩行者の集団通行・・・歩行者の過失割合-5%

歩行者が道路の端以外を通行している場合の事故

事故の類型

自転車と歩行者が衝突した事故で、歩道と車道の区別のない道路で、歩行者が道路の端以外を通行している場合の事故です。

自転車と歩行者の道路端以外での事故

基本過失割合

歩行者自転車
10%90%

歩行者の過失が10%、自転車の過失が90%とされています。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • ふらふら歩き・・・歩行者の過失割合+10%
  • 住宅街、商店街・・・歩行者の過失割合-5%
  • 歩行者の集団通行・・・歩行者の過失割合-5%

歩行者が歩道に進入した場合の事故

事故の類型

歩行者が歩道外から歩道に進入して自転車と衝突した事故です。

歩行者が歩道へ進入した事故

基本過失割合

歩行者自転車
0%100%

歩行者の過失は0%、自転車の過失は100%とされています。

修正要素

以下の事情が基本過失割合を修正する「修正要素」とされています(修正要素の一部を紹介しています)。

  • 歩行者の急な飛び出し・・・歩行者の過失割合+10%
  • 歩行者の集団通行・・・歩行者の過失割合-10%

参考になる裁判例

裁判例①

歩道に進入した歩行者と直進する自転車が衝突した事故

裁判例②

歩道において自宅門から出た歩行者に、坂道を下る自転車が衝突した事故

裁判例③

歩道上で自転車が歩行者に衝突し、急な飛び出しが争点となった事故

裁判例④

歩道において店舗から出てきた歩行者に自転車が衝突した事故

裁判例⑤

歩道において歩行者に自転車が衝突した事故

まとめ

自転車と歩行者の事故であっても、歩行者にも過失があるとされる事故はあります。

歩行者にも過失があるとされてしまうと、損害賠償金として請求できる金額が減らされてしまいます。

自転車事故の過失割合でお悩みの方は、自転車事故に詳しい弁護士にご相談ください。

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2007年に弁護士登録後、大阪の法律事務所で交通事故事件を中心とした弁護士業務を行う。
弁護士として15年以上の経験があり、自転車事故の損害賠償事件を多く扱うとともに、自転車事故の専門サイトを立ち上げ、自転車事故の被害者に向けた情報を発信している。
大阪弁護士会の「分野別登録弁護士名簿」に「交通事故分野」で登録しており、大阪弁護士会のホームページに実務経験として自転車事故の解決実績を掲載している。

弁護士(大阪弁護士会所属 登録番号35297)

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